同居物語-プロローグ-



 それからの話をしよう。
それからと言うのは思い出がいっぱい詰まり過ぎてとても入り切らない程のぼろ校舎を我等がSOS団が卒業した日の事だ。
俺達はなんやかんやよくもまあそんなにやる事があったなと言うぐらい目まぐるしくハルヒに振り回されて、しかし無事に全員卒業したのだから世の中は不思議なものである。
 とは言っても、ハルヒは奇行に奔走しながらでも忌々しい事に成績優秀。
元々SOS団唯一の真面目な頑張り屋さんである朝比奈さんは一足早く大学生進んでいた。
長門は見た一瞬で勉強終了。
古泉もついぞ勉強している姿を見る事は無かったのだが、謎の転校生は頭脳明晰と決まっている。
誰が決めたかなんて、俺は知らんがね。
つまり危なかったのは台風の目にいたあいつらより、外側を回りに回されていた俺だけだったって言うのだから、世の中理不尽。
嗚呼理不尽。
 ハルヒは近くの大学に進んだ。
朝比奈さんの通う大学だ。
一年先に行くんだからそっちでSOS団を作っときなさい、との指令を健気に守り、俺達が行く頃には基盤が出来ていた。
 さて、お気づきかも知れないが、俺達、である。
高校の健康ハイキングコースに飽き飽きしていた俺は家から近くの大学に通いたいと切実に思った訳だ。
その希望をちんけな紙に書き出してみたら、偶然、断じて偶然であるのだが、ハルヒと同じ大学になってしまったのである。
長門はそもそもハルヒの観測が仕事な訳であるからして、疑い様も無く入学式に同じ大学にいた。
まあ、これもハルヒが望んだからかも知れないがね。
 となると、一つだけ番狂わせがあったのは誰の意思だったのだろう。
否、誰の意思かって決まってるか。
古泉自身の意思だ。
そう、古泉だけは同じ大学には行かなかった。
というか大学にすら行かなかった。
ハルヒの奴にはプログラマー系の会社に誘われて就職、と言うような事を説明していたらしいが、俺はそうじゃ無い事を本人に聞いている。
どうやら古泉が所属する組織だか機関だかの中で昇進したんだそうだ。
結局の所何処でどんな仕事をしているのか謎だが、それはまあそのうち聞き出そうかな、と思っている。
実は古泉との付き合いは学校が別々になっても続いているんだな、これが。
 卒業間近のある日、俺もそろそろ一人暮らしなんぞと言うものをしようと決意したのは良いが先立つものが乏しかった訳で、途方にくれていた時、古泉さまさまが「もう少し広い場所に引っ越すつもりなのですが、良かったらルームシェアなどいかがでしょう」とおっしゃたもので。
俺はうっかりねるとんの最後の見せ場みたいに差し出された古泉の手をしっかり握っていたのだった。





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